マイケル・ジャクソンの名前を聞いて、『スリラー』という言葉を思い浮かべない人はいないのではないでしょうか? ボロボロのゾンビたちと一緒にキレキレのダンスを披露するあのMV、明らかに他のアーティストとは次元が違う、とんでもない作品でした。
『スリラー』は、単なる一曲、一つのミュージックビデオを超え、世界の音楽、ダンス、エンターテイメントの常識を塗り替えた、まさに「事件」でした。その衝撃は今もなお、世界中のアーティストに影響を与え続けています。あの世界的スーパースター、BTSのMVにも『スリラー』の振付が取り入れられているほどですから、その影響力の凄まじさが分かります。
今回は、長年マイケル・ジャクソンを追いかけてきた一ファンとして、この不滅の名盤『スリラー』のアルバム全体、革新的なMV、そして世界中で愛されるゾンビダンスの秘密まで、徹底的に深掘りしてその凄さ、魅力を紹介したいと思います。
アルバム『スリラー』:ポップミュージックの常識を塗り替えた背景
多くの人が「スリラー」というとあのミュージックビデオを思い浮かべると思いますが、忘れてはならないのが、まずその「アルバム」がどれだけ凄まじい作品だったか、ということです。
制作に隠された、妥協なきプロフェッショナリズム
『スリラー』は、前作『オフ・ザ・ウォール』で成功を収めたマイケルが、「全曲がヒットするアルバム」を目指して、プロデューサーのクインシー・ジョーンズと共に制作しました。この野心的な目標のために、実に75万ドル(現在の価値で約240万ドル!)という当時の音楽制作費としては破格の予算がかけられています。
レコーディングは1982年の4月から11月にかけて、ロサンゼルスのウェストレイク・レコーディング・スタジオで行われました。時には24時間体制で行われるほど、チームは文字通り寝る間も惜しんで作業にあたったそうです。クインシー・ジョーンズは、まるでミュージシャンたちが担架で運び出されるようだったと(多少の誇張はあれど)語るほど、壮絶な制作現場だったことが伺えます。
驚くべきことに、アルバムが完成した際には、マイケルもクインシーも結果に満足せず、なんと全曲をリミックスし直すという決断を下しました。各曲に1週間を費やしたこの作業は、彼らの完璧主義と、最高のサウンドを追求する執念を示しています。「ビリー・ジーン」のミックスに至っては、91回も試行錯誤を重ねたという逸話が残っているほどです。偶然ではなく、徹底的なこだわりと努力によって、あの時代を超えたサウンドは生み出されたんですね。
マイケルとクインシー・ジョーンズ:最強タッグが生んだ化学反応
『スリラー』の成功を語る上で、マイケル・ジャクソンとプロデューサーのクインシー・ジョーンズのタッグは不可欠です。クインシーはアルバム全体のサウンドの方向性を定め、最高のミュージシャンを集め、マイケルの才能を最大限に引き出す役割を担いました。彼のジャズやポップスに関する豊富な知識は、アルバムの多様なサウンドパレットに色鮮やかなテクスチャーを加えました。
一方、マイケルは単なるヴォーカリストやパフォーマーではありませんでした。彼は「スタート・サムシング」、「ガール・イズ・マイン」、「今夜はビート・イット」、「ビリー・ジーン」といったアルバムの核となる楽曲を自身で書き下ろしました。さらに、ヴォーカルのアレンジや、楽曲に取り入れられた狼の遠吠え(これはマイケル自身が担当したそうです!)、軋むドアの音、「ビリー・ジーン」で段ボールの筒を通して歌ったというユニークな録音方法など、サウンドの細部にまで深く関わっています。時にはクインシーと創造的な意見の衝突もあったそうですが、お互いの才能をリスペクトし、高め合った結果があの傑作を生んだと言えるでしょう。
ポール・マッカートニーからエディ・ヴァン・ヘイレンまで:参加した超豪華ミュージシャンたち
『スリラー』には、当時の音楽シーンのトップを走る錚々たるミュージシャンたちが参加しています。アルバムからの最初のシングルとなった「ガール・イズ・マイン」では、あのポール・マッカートニーとのデュエットが実現しました。異なるジャンルの大スター同士の共演は、当時大きな話題となり、アルバムへの注目度を一気に高めました。
そして、ロック史にその名を刻む伝説的ギタリスト、エディ・ヴァン・ヘイレン。
彼の「今夜はビート・イット」における象徴的なギターソロは、クインシー・ジョーンズからの電話を当初イタズラだと思ったというエピソード付きで、なんと無償で提供されたそうです。このロックとポップスの融合は、まさに『スリラー』のジャンルレスな魅力を象徴しています。
他にも、TOTOのメンバーが「今夜はビート・イット」や「ヒューマン・ネイチャー」など多数の楽曲で演奏に参加しています。「ビリー・ジーン」の象徴的なベースラインはルイス・ジョンソン、そしてタイトル曲「スリラー」のあの不気味で印象的なナレーションは、ホラー映画俳優として有名なヴィンセント・プライスが担当しました(彼は印税ではなく2万ドルの出演料を選んだそうです)。
全曲紹介:本当に捨て曲なしの驚異的なラインナップ
『スリラー』のアルバムには9曲が収録されていますが、本当にどの曲も素晴らしいんです!それぞれに個性がありながら、アルバムとして完璧な流れを作っています。
- スタート・サムシング (Wanna Be Startin’ Somethin’)
元々は妹のラトーヤのために書かれた曲で、家族間の対立がテーマと言われていますが、メディアのゴシップや社会問題にも通じる歌詞になっています。あの特徴的なコーダ(「ママセ・ママサ・ママクサ」)はマヌ・ディバンゴの曲にインスパイアされたもので、後に和解しています。
ライブでも定番のダンスナンバーとなっていますね。私も好きな一曲です。 - ベイビー・ビー・マイン (Baby Be Mine)
ロッド・テンパートン作の、少しジャジーでソウルフルなナンバー。ジョン・コルトレーンへのオマージュとも言われています。 - ガール・イズ・マイン (The Girl Is Mine) (with ポール・マッカートニー)
ポール・マッカートニーとのデュエット。マイケル作で、より幅広い層にアピールするための戦略的なシングルでした。 - スリラー (Thriller)
アルバムタイトル曲であり、言わずと知れた代表曲。当初は「スターライト」というタイトルでしたが、クインシー・ジョーンズが求めた「エドガー・アラン・ポーのような雰囲気」を出すためにホラーテーマに変更されました。ヴィンセント・プライスのナレーションや、様々な効果音が世界観を作り上げています。 - 今夜はビート・イット (Beat It)
クインシー・ジョーンズの「あらゆる層にアピールするロックソング」というリクエストに応え、ザ・ナックの「マイ・シャローナ」にインスパイアされてマイケルが作ったロックアンセム。エディ・ヴァン・ヘイレンのギターソロと、ギャングの暴力やマッチョイズムを批判する歌詞が特徴です。 - ビリー・ジーン (Billie Jean)
個人的に最も思い入れの深い一曲です。マイケルの熱狂的なファンに関する個人的な経験が元になっていると言われています。この曲なくして『スリラー』の成功は語れません。象徴的なベースラインと、暗闇の中で歌うことを好んだというマイケルのヴォーカルワークが光ります。 - ヒューマン・ネイチャー (Human Nature)
TOTOのスティーヴ・ポーカロとジョン・ベティスが書いた美しいバラード。デモテープをクインシーが偶然聴いてアルバム収録が決まったというエピソードがあります。ニューヨークの街を通り過ぎる人々について歌っています。 - P.Y.T. (Pretty Young Thing)
アップテンポでダンサブルなファンクナンバー。ジェームス・イングラムとクインシー・ジョーンズの共作で、バッキングヴォーカルには妹のジャネットとラトーヤも参加しています。 - レディ・イン・マイ・ライフ (The Lady in My Life)
ロッド・テンパートン作の、ソウルフルでロマンチックなクローズニングナンバー。
[リスト:『スリラー』アルバム 収録曲]
- スタート・サムシング (Wanna Be Startin’ Somethin’)
- ベイビー・ビー・マイン (Baby Be Mine)
- ガール・イズ・マイン (The Girl Is Mine) (with ポール・マッカートニー)
- スリラー (Thriller)
- 今夜はビート・イット (Beat It)
- ビリー・ジーン (Billie Jean)
- ヒューマン・ネイチャー (Human Nature)
- P.Y.T. (Pretty Young Thing)
- レディ・イン・マイ・ライフ (The Lady in My Life)
ジャンルを越境した革新的サウンド
『スリラー』のサウンドは、ポップ、ロック、R&B、ソウル、ファンクといった様々なジャンルが見事に融合しています。『オフ・ザ・ウォール』のソウルフルな土台の上に、「今夜はビート・イット」のようなアグレッシブなロックサウンドや、「ヒューマン・ネイチャー」のような洗練されたAORサウンドまで取り込み、誰もが楽しめる多様な音楽性を実現しました。
また、シンセサイザーやドラムマシンといった当時の最新電子楽器を、ホーンセクションやストリングスといった伝統的な楽器と組み合わせることで、未来的でありながらも人間味あふれる、独自のサウンドスケープを創造しました。このサウンドの革新性も、多くの人に衝撃を与え、後の音楽制作に大きな影響を与えました。
MV『スリラー』:音楽ビデオを「アート」に昇華させた短編映画
「スリラー」と言えば、やはりあの伝説的なミュージックビデオ(MV)です。
マイケル自身が「ショートフィルム」と呼んだこの映像作品は、音楽ビデオの概念そのものを変えてしまいました。
前代未聞の予算と、ジョン・ランディスとの出会い
当時、音楽ビデオは楽曲のプロモーションのための短いクリップという位置づけでした。
しかし、『スリラー』のMVは違います。ジョン・ランディス監督(『アニマル・ハウス』『ブルース・ブラザース』など)と共に制作されたこのMVは、推定で50万ドルから90万ドルという、当時としては前代未聞の巨額予算がかけられました。
レコード会社は当初、これほどの予算を出すことに渋りましたが、マイケルとランディスは、ShowtimeやMTV、そしてメイキングドキュメンタリーの権利を販売することで資金を調達しました。特に、MVのメイキング映像を収めたドキュメンタリー『メイキング・オブ・スリラー』がVHSとして発売され、当時の記録を塗り替える100万本以上を売り上げたことは、ホームビデオ市場を開拓するという点で画期的な出来事でした。MVそのものだけでなく、関連コンテンツでもビジネスモデルを変革してしまったんですね。
撮影は1983年10月に行われ、ロサンゼルスの様々な場所で敢行されました。タイトなスケジュールながら、細部までこだわり抜かれた映像が作り上げられました。
ホラーとダンスが融合した圧巻の世界観
『スリラー』MVの最大の魅力は、そのホラー映画さながらの世界観です。冒頭から、マイケルがガールフレンドとホラー映画を見ているという二重構造の物語が展開し、狼男に変身するマイケル、墓場から這い出てくるゾンビたち、そして路地裏で襲いかかるゾンビの大群…ホラー映画への深いリスペクトが感じられる演出の連続です。
この不気味でリアルなゾンビたちの特殊メイクは、特殊メイクアップ界の巨匠、リック・ベイカーが手掛けました。マイケルが狼男に変身する「ウェアキャット」の描写や、ゾンビのリアルな質感は、彼の卓越した技術の賜物です。メイクアップ作業は非常に大変だったようですが、そのクオリティがMVのホラーとしての完成度を高めています。
そして何と言っても、ホラーの緊迫感の中に突如現れる、ゾンビたちとの群舞シーンです。
このギャップと、ゾンビという異形の存在とのダンスという斬新なアイデアが、世界中の視聴者に強烈なインパクトを与えました。「怖いけど、かっこいい!」という感情を同時に呼び起こす、まさに唯一無二の体験でした。
MTVと音楽業界の歴史を変えた「人種の壁」の打破
『スリラー』のMVが持つもう一つの、そして極めて重要な意義は、音楽業界における人種の壁を打ち破ったことです。当時、MTVは主に白人ロックアーティストを中心に放送しており、黒人アーティストのビデオを流すことに消極的でした。
しかし、アルバム『スリラー』から先行してリリースされ大ヒットしていた「ビリー・ジーン」のMVのクオリティと人気は無視できませんでした。それでも当初MTVは放送を拒否しましたが、CBSレコードの社長が「マイケルのビデオを流さないなら、CBSの全アーティストのビデオを引き上げる」と最後通牒を突きつけた結果、「ビリー・ジーン」はMTVでヘビーローテーションされることになります。
この「ビリー・ジーン」の成功、そして続く「今夜はビート・イット」、「スリラー」のMVの爆発的な人気は、MTVに黒人アーティストの作品を放送することの商業的な成功と、視聴者の大きな需要があることを証明しました。これにより、プリンスやリック・ジェームスといった他の黒人アーティストのビデオもMTVで流れるようになり、MTVの番組編成方針が大きく変わるきっかけとなったのです。
マイケルの『スリラー』は、単に素晴らしい音楽と映像を提供しただけでなく、メディアにおける黒人の存在感を高め、後の多くの黒人アーティストが活躍するための道を切り拓いたという、歴史的な功績も持っているのです。
「スリラー」が打ち立てた前人未踏の記録
『スリラー』の凄さは、その商業的な成功が証明しています。文字通り、音楽業界の記録を塗り替えてしまいました。
史上最も売れたアルバム:ギネス世界記録認定の驚愕セールス
『スリラー』のアルバムは、史上最も売れたアルバムとしてギネス世界記録に認定されています。全世界での累計売上枚数は、推定で7000万枚以上、資料によっては1億枚を超えるとも言われています。
これは、他の追随を許さない、まさに桁外れの数字です。
アメリカ国内だけでも、RIAA(アメリカレコード協会)からは驚異の34xプラチナ認定を受けています(資料によっては33xプラチナと記載されているものもありますが、最新データでは34xです)。
アメリカだけで数千万枚が売れたということですから、その凄まじさが分かります。
この記録は、単にマイケル・ジャクソンの人気を示すだけでなく、このアルバムが世界中のあらゆる人種、世代、文化の人々に受け入れられ、愛されたことの何よりの証です。
チャートを総ナメにした圧倒的支配力
アルバム『スリラー』は、世界各国のチャートで圧倒的な強さを見せつけました。
特にアメリカのビルボード200チャートでは、37週間にわたって1位を獲得しました(これは非連続での記録です)。さらに、トップ10には80週間もランクインし続けました。これは当時としては驚異的な記録で、最近まで黒人アーティストのアルバムとしてビルボード200のトップ10に最も長く滞在した記録でした(※最近、SZAというアーティストのアルバムがこの記録を更新しました)。
日本のオリコンチャートでも、1983年の年間アルバムチャートで堂々の1位を獲得しています。シングルとしても、「ガール・イズ・マイン」、「ビリー・ジーン」、「今夜はビート・イット」、「スタート・サムシング」、「ヒューマン・ネイチャー」、「P.Y.T.」、「スリラー」の7曲がビルボードHot 100でトップ10入りするという、これまた当時の新記録を樹立しました。アルバムからこれほど多くのヒットシングルが生まれた例は他にありませんでした。
歴史的快挙:グラミー賞8部門受賞
『スリラー』イヤーとなった1984年のグラミー賞授賞式は、マイケル・ジャクソンにとって忘れられない一夜となりました。なんと彼は、一晩で史上最多となる8部門を受賞するという歴史的快挙を達成したのです。
受賞した主な部門はこちらです。
- 年間最優秀アルバム (Album of the Year) – 『スリラー』
- 年間最優秀レコード (Record of the Year) – 「今夜はビート・イット」
- 最優秀ポップ・ヴォーカル・パフォーマンス(男性) (Best Pop Vocal Performance, Male) – 『スリラー』
- 最優秀ロック・ヴォーカル・パフォーマンス(男性) (Best Rock Vocal Performance, Male) – 「今夜はビート・イット」
- 最優秀R&Bソング (Best R&B Song) – 「ビリー・ジーン」
- 最優秀R&Bヴォーカル・パフォーマンス(男性) (Best R&B Vocal Performance, Male) – 「ビリー・ジーン」
- 年間最優秀プロデューサー(ノンクラシカル) (Producer of the Year, Non-Classical) – マイケル・ジャクソン & クインシー・ジョーンズ
- 最優秀レコーディング・フォー・チルドレン (Best Recording for Children) – 『E.T. ジ・エクストラ・テレストリアル』(アルバム)
年間最優秀アルバム、レコード、そして複数のジャンルでのヴォーカル賞に加え、クインシー・ジョーンズと共に年間最優秀プロデューサーも受賞しました。これは、マイケルが単なるパフォーマーとしてだけでなく、サウンドクリエイターとしても最高峰の評価を得たことを示しています。このグラミー賞での圧倒的な成功は、マイケルを疑いのない「キング・オブ・ポップ」の地位へと押し上げました。
国家によって永久保存された文化的遺産
『スリラー』の文化的、歴史的重要性は、公式にも認められています。
あの伝説的なMV『マイケル・ジャクソンのスリラー』は、「文化的、歴史的、または美学的に重要」であるとして、ミュージックビデオとして初めて、2009年にアメリカ議会図書館の国立フィルム登録簿に永久保存されました。これは、映像遺産として国が認めたということです。
さらに、アルバム『スリラー』も2008年に国立録音登録簿に追加されています。アルバムとMVの双方が、国の重要な遺産として登録されているという事実は、極めて稀有なことであり、『スリラー』が音楽と映像の両面において、いかに記念碑的な作品であるかを物語っています。
リンク:マイケル・ジャクソン「スリラー」のフィルムが永久保存決定
不滅の「ゾンビダンス」:世界中が真似した振付の秘密
『スリラー』のMVを見て最も多くの人が真似したくなったもの、それは間違いなくあのゾンビダンスでしょう。
振付師マイケル・ピータースとの共同創造
あのアイコニックなゾンビダンスは、マイケル・ジャクソンと、優れた振付師であるマイケル・ピータースの共同作業によって生み出されました。ピータースは「今夜はビート・イット」の振付も手掛けており、さらに日本の少年隊の「PLAYZONE」の第一回の振付も担当していたというから驚きです!日本のエンタメ界とも意外な繋がりがあったんですね。
二人は鏡の前で顔を作りながら、ゾンビの動きを想像して振付を考案したそうです。ホラー映画のゾンビの動きをベースに、ジャズダンスのステップなどを融合させ、あの独特でキャッチーな振付が完成しました。
なぜあのダンスはこれほどまでに魅力的で革新的なのか?
『スリラー』のゾンビダンスは、単に「ゾンビが踊っている」という面白さだけではありません。なぜこれほどまでに人々の心を捉え、模倣されたのでしょうか?
- ホラーとダンスの斬新な融合: 醜い、恐ろしい存在であるはずのゾンビが、集団でシンクロして踊る。この異質な組み合わせが、視覚的、感覚的な衝撃を与えました。ホラー映画の世界観を壊さずに、見事にダンスと結びつけています。
- キャッチーさと再現性: ムーンウォークのような超絶技巧ではありませんが、あの肩や首を引きつらせる動き、獣のようなポーズ、集団で前進するステップなどは、決して簡単ではないものの、繰り返し練習すればある程度形にできる「マネしやすさ」がありました。
- ストーリーテリング: ダンスが単なる見せ場ではなく、物語の一部として機能しています。ゾンビがマイケルを襲うシーンからダンスに移行し、最終的にマイケルもゾンビ(あるいはウェアキャット)化するという展開は、ダンスによってストーリーを進行させています。
- 集団のダイナミクス: 一人ではなく、大勢のゾンビたちとの群舞だからこその迫力と魅力があります。ピタッと揃った動きと、個々のゾンビの不気味な表情が組み合わさることで、唯一無二のスペクタクルが生まれています。
私自身、あの集団で肩を揺らしながら迫ってくるシーンが、リズミカルでいて不気味で、何度見てもゾクゾクします。マイケルって、喧嘩中のギャングたちと踊っても(Beat It)、今回はゾンビたちと踊っても、なぜこうもカッコよくキマるんでしょうね。。。あの表現力と存在感は本当に凄まじいです。
フラッシュモブから現代アーティストまで:広がり続けるダンスの波紋
『スリラー』のゾンビダンスは、MVが公開されるやいなや世界中で大流行しました。学校の文化祭、会社の忘年会、地域のイベントなど、様々な場所で人々がこのダンスを真似て踊りました。
そして現代では、フラッシュモブという形で世界中にその振付が広がっています。ハロウィンになると世界中の都市で『スリラー』のフラッシュモブが行われ、多くの人が楽しんでいます。これは、『スリラー』のダンスが持つ普遍的な楽しさ、そして人々を繋げる力があることの証明でしょう。
さらに、このダンスのDNAは、現代のアーティストたちにも受け継がれています。冒頭でも触れたように、世界的スーパースターのBTSも、人気曲「Dynamite」のMVやパフォーマンスで、『スリラー』の集団で肩を揺らして迫る振付を取り入れています。
K-POPアーティストの中には、BTSだけでなく、多くのグループがマイケル・ジャクソンのダンスから影響を受けていると言われています。アメリカ進出を狙う際に、誰もが知っているマイケルのキャッチーな振付や要素を取り入れることで、話題性を生み出している側面もあるのかもしれませんね。
あなたも踊れる!「スリラー」ゾンビダンスの楽しみ方
「あのゾンビダンス、自分でも踊ってみたい!」と思った方もいるのではないでしょうか?安心してください!世界中には『スリラー』のゾンビダンスの解説動画がたくさん公開されています。
YouTubeで検索すれば、初心者の方でも分かりやすい丁寧なレクチャー動画が見つかりますよ。あの象徴的な動きを覚えて、会社の飲み会で披露したり、地元のハロウィンイベントで踊ってみたり…きっと盛り上がること間違いなしです!
もし、マイケル・ジャクソンのダンスをもっと本格的に、基礎からしっかり学んでみたい!という方がいれば、私たちが運営しているダンス教室もぜひ検討してみてください。マイケル愛に溢れる講師たちが、彼のダンスの魅力を余すことなくお伝えします!
『スリラー』が遺したもの:時代を超えて輝くコンテンツ
マイケル・ジャクソンの『スリラー』は、発表から40年以上が経過した今もなお、私たちに多くのものをもたらし続けています。
音楽、映像、ファッション…全てに影響を与えた伝説の作品
『スリラー』は、音楽と映像の可能性を文字通り拡大しました。単なる楽曲とビデオの集合体ではなく、一つの総合的なエンターテイメント作品として、後世のアーティストに計り知れない影響を与えました。ジャネット・ジャクソンの「リズム・ネイション」やバックストリート・ボーイズの「エヴリバディ (Backstreet’s Back)」など、多くのMVが『スリラー』の物語性や群舞のスタイルに影響を受けています。K-POPのホラーコンセプトのMVなどにもその影響は見られます。
また、『スリラー』のMVでマイケルが着用していた、デボラ・ナドゥールマン・ランディスがデザインしたあの赤いレザージャケットや、片手袋、ミリタリー調のジャケットといったファッションアイテムも、世界的な流行を生み出しました。
ビヨンセ、ブルーノ・マーズ、ジャスティン・ティンバーレイク、ザ・ウィークエンドなど、現代のトップアーティストたちが、こぞってマイケル・ジャクソン、そして『スリラー』を自身のルーツとして挙げています。それは、彼の音楽、ダンス、パフォーマンス、そしてエンターテイナーとしての哲学が、今もなお多くのクリエイターにとっての最高の教科書、インスピレーション源であり続けているからです。
なぜ私たちは今も『スリラー』に心惹かれるのか
セールス記録、チャート、グラミー賞…『スリラー』の偉大さは数字が物語っています。しかし、私たちが今もこの作品に心惹かれる理由は、単なる記録だけではありません。
それは、ポップス、ロック、R&Bといったジャンルを超越した、普遍的な「素晴らしい音楽」であること。 ホラーとダンスという異色の組み合わせが生んだ、予測不能でエキサイティングな映像体験であること。 そして、マイケル・ジャクソンという稀代のエンターテイナーが、魂を込めて作り上げた圧倒的なパフォーマンスが詰まっていること。
最近上映された「Wicked」という私がハマった映画があるのですが、
主演のアリアナとシンシアの魂の込め具合が凄まじく、特にアリアナは本作品の昔からのファンとのことで、少し調べるとオーディション段階から熱量がとんでもなく、Wickedは世界的大ヒットとなっていました。
やはり魂を込めるというのは非常に大切な要素だと思っており、才能があり努力を続けてきた人が正しい方向に魂を込めるとこで、とんでもない大ヒットが生まれるのではないかと思います。
マイケルがその最たる例だと、個人的には思います。
YouTubeやTikTokで、今の若い世代が『スリラー』の楽曲やダンスに触れる機会が増えているのは、本当に嬉しいことです。時代が変わっても、音楽の良さ、パフォーマンスの凄さ、そしてマイケル・ジャクソンという存在の輝きは、決して色褪せることがないのだと改めて感じます。
まだ『スリラー』のアルバムをじっくり聴いたことがない方、MVを見たことがない方、ぜひこの機会にチェックしてみてください。そこには、あなたの知っている「マイケル・ジャクソン」のイメージを覆す、あるいはさらに深く理解する、歴史的で、そして今もなお「生きている」伝説があります。
『スリラー』はこれからも、きっと世界中で愛され、語り継がれていく、不滅の名盤です。
マイケルをあまり知らなくて今回少しでも興味を持っていただいた方、以下の記事もぜひ読んでみてください。マイケルのよくあるGOSSIPについてです。
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