今回は、マイケル・ジャクソンが、その唯一無二のパフォーマンスを創り上げる上で、どのようなアーティストたちから影響を受けてきたのか、そのルーツを深く掘り下げてみたいと思います。
マイケル・ジャクソンの天才性は、単なる天賦の才だけではありません。彼自身が「偉人たちを研究し、もっと偉大になれ」という言葉を残しているように、彼は先人たちのパフォーマンスを熱心に研究し、そのエッセンスを吸収し、全く新しい独自の芸術へと昇華させる「芸術の錬金術師」でした。
彼のパフォーマンスのどの部分に、誰の影響が見られるのか。今回は、その繋がりをダンスと音楽の両面から、ファンとしての想いも込めてご紹介していきます。
先駆者たち:マイケル・ジャクソンのダンスへの影響
マイケルのダンスは、世界中の人々を熱狂させ、文化現象となりました。その驚異的な動きの一つ一つには、彼が心から尊敬した先駆者たちの魂が宿っています。
ステージとスクリーンの巨匠たち
ジェームス・ブラウン 「ゴッドファーザー・オブ・ソウル」ことジェームス・ブラウンは、マイケルが最も影響を受けた人物として常に名前を挙げるアーティストです。マイケル自身、「この人物ほど僕に大きな影響を与えた人はいない」と語っています。ブラウンの爆発的なステージエネルギー、キレのあるフットワーク、スピン。その全てをマイケルは少年時代から研究し、自身のものにしてきました。
↑冒頭からマイケルがStart Somethingで披露するステップをしていますね。
フレッド・アステア & ジーン・ケリー ハリウッドミュージカルの黄金時代を築いたフレッド・アステアとジーン・ケリー。彼らの洗練された優雅さと、物語を語るようなダンスは、マイケルのパフォーマンスに気品とストーリー性をもたらしました。特に、楽曲「スムース・クリミナル」で見せる白いスーツ姿や、ありえない角度に傾くパフォーマンスは、アステア主演の映画『バンド・ワゴン』へのオマージュであることは有名な話ですよね。
ジャッキー・ウィルソン マイケルが自伝『ムーンウォーク』の中で、「他の誰よりも、何よりも」影響を受けたと記しているのが、ジャッキー・ウィルソンです。そのダイナミックなステージ、パワフルで感情的な歌と身体表現。ウィルソンの洗練されたショーマンシップと、観客を惹きつけるクールなスタイルは、若き日のマイケルにとって最高の教科書だったと言えるでしょう。
ダンスの語彙を広げた革新者たち
ボブ・フォッシー 伝説の振付師ボブ・フォッシーからも、マイケルは大きな影響を受けています。身体の特定の部分だけを動かすアイソレーション、内股のスタンス、そして帽子や手袋を使った特徴的な動きは、マイケルのダンス、特に「ビリー・ジーン」の振り付けなどにも色濃く反映されています。
マルセル・マルソー 「パントマイムの神様」マルセル・マルソーも、マイケルにとって重要なインスピレーションの源でした。マイケルの代名詞であるムーンウォークは、マルソーの「風に向かって歩く」というパントマイムが元になっていると言われています。言葉を使わずに動きだけで観客を魅了する表現力は、マイケルのパフォーマンス哲学の根幹にも通じるものがあります。
ストリートから生まれた伝説のムーブ
バックスライドとムーンウォーク 今やマイケルの代名詞であるムーンウォークですが、実は彼が発明したものではなく、「バックスライド」というストリートダンスのステップを進化させたものです。古くはタップダンサーのビル・ベイリーなどが披露していましたが、70年代から80年代にかけて、ジェフリー・ダニエル(シャラマー)やエレクトリック・ブーガルーズといったストリートダンサーたちが発展させました。マイケルは彼らからこの動きを学び、洗練させ、1983年の「モータウン25」での伝説的なパフォーマンスで「ムーンウォーク」として世界に示し、文化現象へと昇華させたのです。
楽曲作成において影響を受けたアーティスト
音楽的基盤を築いたモータウン時代
言うまでもなく、マイケルの音楽的キャリアはジャクソン5として在籍したモータウン・レコードで始まりました。ベリー・ゴーディ・ジュニア率いるこのヒットメーカー工場で、彼はプロのソングライティングや厳しいリハーサルを経験し、アーティストとしての基礎を徹底的に叩き込まれました。
スティーヴィー・ワンダーのメロディの天才性やハーモニーの複雑さ、ダイアナ・ロスのスター性、マーヴィン・ゲイの芸術的誠実さなど、モータウンの偉大なアーティストたちに囲まれた環境が、彼の音楽性を豊かに育んだことは間違いありません。
ソロ・サウンドを拡張した巨匠たち
ポール・マッカートニー(ビートルズ) マイケルはビートルズの大ファンで、特にポール・マッカートニーのメロディ作りの才能を絶賛していました。「一度聴いたら歌えるメロディ」と「物語のある歌詞」。この2つを、彼はポールから学んだ重要な要素として挙げています。後に「ガール・イズ・マイン」や「セイ・セイ・セイ」で共演も果たしましたよね。この普遍的なソングライティングへのこだわりが、マイケルの楽曲が世界中で愛される理由の一つと言えるでしょう。
クインシー・ジョーンズ プロデューサー、クインシー・ジョーンズとの出会いは、マイケルのソロキャリアを語る上で欠かすことができません。『オフ・ザ・ウォール』『スリラー』『バッド』という歴史的な三部作を通じて、クインシーはマイケルの才能を最大限に引き出し、ポップ、R&B、ファンク、ロックといった多様なジャンルを融合させた、洗練かつ革新的なサウンドを創り上げました。二人のパートナーシップは、まさに奇跡的な化学反応だったと思います。
ジャンルの壁を超えたインスピレーション
マイケルの音楽的探求心はとどまることを知りませんでした。スライ&ザ・ファミリー・ストーンのファンクとロックの融合、ベートーヴェンの交響曲のようなクラシック音楽の壮大さ、ゴスペルの持つ魂の叫び、アフリカのリズム…彼は世界中のあらゆる音楽からインスピレーションを得て、それを自身のポップミュージックへと見事に溶け込ませていったのです。
錬金術師マイケル・ジャクソン:模倣を超えた創造
ここまで見てきたように、マイケルは多くの偉大なアーティストから影響を受けました。しかし、彼が「キング・オブ・ポップ」たる所以は、単に模倣が上手かったからではありません。
彼の真の凄さは、様々な要素を吸収し、それらを一度自分の中で完全に消化し、全く新しい、誰も見たことのない「マイケル・ジャクソン」という芸術へと変容させる「錬金術」にあったのだと私は考えています。
彼は先人たちのパフォーマンスを徹底的に研究し、その本質を理解した上で、自身の完璧主義と融合させ、元のコンセプトを超えるレベルへと引き上げました。ストリートダンスの「バックスライド」が、洗練とブランディングを経て世界的な「ムーンウォーク」になったのが、その最も分かりやすい例でしょう。
この「観察・吸収・変容・革新」というプロセスこそが、マイケル・ジャクソンの創造性の核心なのです。
まとめ:天才の永続的な遺産 引き継がれていく芸術
マイケル・ジャクソンの芸術の源流を辿ってみると、ジェームス・ブラウンの魂、フレッド・アステアの気品、ビートルズのメロディ、そしてストリートの生きたエネルギーなど、本当に多くの先人たちの輝きが見えてきます。
彼の天才性は、これらの偉大な影響をただ受け継ぐだけでなく、それらを前人未到のレベルで統合し、ダンス、音楽、ビジュアルが一体となった総合芸術へと昇華させた点にあります。彼は、ポップスターという存在そのものの概念を永遠に変えてしまいました。
先人たちへの深い敬意と、それを超えようとする飽くなき探求心。この両輪があったからこそ、マイケル・ジャクソンは時代を超えて愛される不滅のアイコンとなり得たのでしょう。彼の遺産は、今もなお世界中のアーティストにインスピレーションを与え続けています。
参考リンク
- マイケル・ジャクソンは、ジェームス・ブラウンやフレッド … – Reddit, https://www.reddit.com/r/MichaelJackson/comments/125uva3/did_michael_jackson_teach_himself_how_to_dance_by/?tl=ja
- マイケル・ジャクソンの伝説的ダンス:ムーンウォークと創造性の …, https://www.toolify.ai/ja/ai-news-jp/%E4%BC%9D%E8%AA%AC%E7%9A%84%E5%89%B5%E9%80%A0%E6%80%A7%E7%A7%98%E5%AF%86-3403169
- アメリカ偉人伝! vol.23【ジェームス・ブラウン】音楽史に輝く …, https://safarilounge.jp/online/culture/column/detail.php?id=15610
- マイケルジャクソン | ビートルズやメンバーへのミュージシャンの発言集 The Beatlesの影響 The Beatlesの評価, https://ameblo.jp/kaikosumiiyoshi/entry-12303469181.html
- ジャッキー・チェン、フレッド・アステア、マイケル・ジャクソンの奇妙な関係 – note, https://note.com/sa_mi_dra/n/n5004a04bf294
- アステアとMJ | Kiki’s random thoughts, https://kikisrandomthoughs.blog.fc2.com/blog-entry-296.html
- Jackie Wilson — マイケルが「最も影響を受けた」アーティスト …, http://princessmichael.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/jackie-wilson.html
- “Moonwalk” by Michael Jackson – BRICE NAJAR, https://www.bricenajar.com/en/2021/11/27/michael-jackson-moonwalk-the-review/
- マイケル・ジャクソンの不朽の魅力:音楽、ダンス、そしてスタイル – Toolify.ai, https://www.toolify.ai/ja/ai-news-jp/%E4%B8%8D%E6%9C%BD%E9%AD%85%E5%8A%9B%E9%9F%B3%E6%A5%BD-3392098
- ジャッキー・ウィルソン/ブランズウィック・コンプリート・シングル・コレクション 2 生産限定盤 【CD】, https://www.biccamera.com/bc/item/3114755/
- スウィート・チャリティ(2)ボブ・フォッシーについて | 演出家 …, https://juneiyeda.com/articles/post-180305-2/
- NYで知ったマイケル・ジャクソンの偉大さ – NY1PAGE, https://ny1page.com/2012/03/26/columnmar2012/
- ムーンウオークの着想はマルセル・マルソーのパントマイムと …, https://www.afpbb.com/articles/-/2615619
- マイケル・ジャクソンも影響を受けたマルセル・マルソーのドキュメンタリー、予告解禁 – ナタリー, https://natalie.mu/eiga/news/534495
- ニコラス・ブラザーズ – Wikipedia, https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%82%BA
- The Nicholas Brothers (part 4) – STRONGER THAN PARADISE – FC2, https://strongerthanparadise.blog.fc2.com/blog-entry-43.html
- ムーンウォーク – Wikipedia, https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%AF
- TIL that Michael Jackson was not the original person to do the “moonwalk”. One year before Motown, the “backslide” was first performed by Jeffrey Daniel, a member of the band Shalamar who went on to be Michael’s dancing coach. – Reddit, https://www.reddit.com/r/todayilearned/comments/1b4ktj/til_that_michael_jackson_was_not_the_original/
- Beyond the Moonwalk, A Dance Legacy | Documentary Pilot – Renegade Lens Pictures, https://www.renegadelens.com/btm.html
- 筋肉を弾くダンス?有名アーティストも踊るポッピンを紹介!, https://www.jydf.jp/post/poppin
- 有名なヒップホップダンサーの紹介 – GIGGLE DANCE SCHOOL(ギグルダンススクール)ブログ, https://blog.giggledanceschool2023.com/staff/%E6%9C%89%E5%90%8D%E3%81%AA%E3%83%92%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%9B%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%81%AE%E7%B4%B9%E4%BB%8B/
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- マイケル・ジャクソンとスティーヴィー・ワンダーの伝説的共演:舞台裏と音楽的影響 – Toolify.ai, https://www.toolify.ai/ja/ai-news-jp/%E4%BC%9D%E8%AA%AC%E7%9A%84%E5%85%B1%E6%BC%94%E8%88%9E%E5%8F%B0%E8%A3%8F%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E7%9A%84%E5%BD%B1%E9%9F%BF-3393701
- マイケル×ジャズカバー | 早稲田マイケルジャクソン研究会のブログ, https://ameblo.jp/mj-waseda/entry-12876133529.html
- Happy Birthday, MJ|WOWOWオンライン, https://www.wowow.co.jp/music/mj/history_quiz_result.html?
- ジャクソン5とは? わかりやすく解説 – Weblio辞書, https://www.weblio.jp/content/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%AF%E3%82%BD%E3%83%B35
- ポール・マッカートニー/ マイケル・ジャクソン Say Say Say | りなちゃんパパの音楽万歳, https://ameblo.jp/unfashionablefashion/entry-12581810249.html
- シンセサイザー鍵盤狂漂流記 その211 ~追悼 偉大なる …, https://www.soundhouse.co.jp/contents/column/index?post=4124
- マイケル・ジャクソンの音楽制作:伝説の裏側を徹底解剖 – Toolify.ai, https://www.toolify.ai/ja/ai-news-jp/%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E5%88%B6%E4%BD%9C%E4%BC%9D%E8%AA%AC%E8%A3%8F%E5%81%B4%E5%BE%B9%E5%BA%95%E8%A7%A3%E5%89%96-3394787
- マイケル・ジャクソンの素顔 ー 天才の孤高の創作 – NIHO kamakura, https://niho.life/zine/music-legend-michael
- 第15回 マイケル・ジャクソン「ロック・ウィズ・ユー」 (1979年)【後編】 | 連載「西寺郷太 It’s a Pops」, https://www.110107.com/s/oto/diary/detail/3224?ima=3205&cd=rensai
- マイケル・ジャクソンの魂が蘇る!「リトル・スージー」徹底解説, https://www.toolify.ai/ja/ai-news-jp/%E9%AD%82%E8%98%87%E5%BE%B9%E5%BA%95%E8%A7%A3%E8%AA%AC-3397414
- Will You Be There – Wikipedia, https://en.wikipedia.org/wiki/Will_You_Be_There
- Michael Jackson’s ‘Will You Be There’ sample of George Szell and Cleveland Orchestra’s ‘Symphony No. 9 in D Minor, Op. 125, “Choral” (Finale)’ | WhoSampled, https://www.whosampled.com/sample/817943/Michael-Jackson-Will-You-Be-There-George-Szell-Cleveland-Orchestra-Symphony-No.-9-in-D-Minor,-Op.-125,-Choral-(Finale)/
- Michael Jackson – Wikiquote, https://en.wikiquote.org/wiki/Michael_Jackson
- 「僕じゃ駄目かな?」からはじまるマイケル・ジャクソンの伝説に学ぶこと。|阿部広太郎 – note, https://note.com/kotaroa/n/n503d6d4a8227
- 山本耕史! – SmaTIMES || smaSTAION!!, https://www.tv-asahi.co.jp/ss/contents/smatimes/001/index.html
- マイケル・ジャクソンから受けた影響は? 現役大学生バンド・Billyrromが語る – radiko news, https://news.radiko.jp/article/station/FMJ/86745/
- マイケル・ジャクソン『スリラー』が出た1983年、のちの「シティ …, https://kompass.cinra.net/article/202311-throwback_thursday1983
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